行動を変える仕組みを作ろう!〜仕掛学まとめ〜
はじめに

私たちが直面する問題の多くは「行動」ができない、もしくはしてしまうことから起因しています。のぞましい行動を増やし、やめたい行動をしないようにするには「気持ち」ではなく、そうしないような「仕掛け」が必要です。この記事ではそういった「仕掛け」について述べた「仕掛学」という本についてレビュー、要約を書いていきます。

仕掛けは意識させない

駐輪場に斜めの線が引かれていると自然とそれに合わせて駐車しますよね。それに代表されるように、仕掛けとは対象に意識をさせずに「結果として」目的を達成させることに特徴があります。

北風と太陽

北風で無理やり上着を脱がそうとするよりも、太陽が暑さで自然と上着を脱ぐように仕向けたという北風と太陽の逸話。この話のように仕掛けとは、正攻法で攻略できない問題にアプローチする有効な手段となりうる。

仕掛学の定義

次のFAD要件を満たしていること。

・公平性(Fairness) 誰も不利益を被らない。

・誘因性(Attractiveness)行動が誘因される。

・目的の二重性(Duality of purpose)仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる。

仕掛けは行動の選択肢を増やすもの

「仕掛け」は強制とは異なる。もともと何もなかったところに新たな選択肢を増やし、その行動をとった方が魅力的だと思わせるのである。問題を解決したいときに、直接お願いするのではなく、その人の興味と行動を結びつけて、結果的に問題を解決するのである。

仕掛けの副作用性

誘導する行動と結果が一見すると無関係に見える程よい。また、「行動」は同じだが結果が異なるような仕組みを作ると良い。ゴミ箱をバスケットゴールに見立てた仕掛けは「投げる」という行動は同じだが、「結果」は異なる。お金を入れると音楽が流れる募金箱なども同じ原理と言える。

仕掛けの「負担」と「便益」

その行動を起こすのに必要な労力を「負担」といい、その行動をした結果もたらされるたのしさを「便益」という。

・階段が音の出るピアノになっている。負担(大)、便益(大)

・「階段を使え」という張り紙。負担(大)、便益(小)

・ゴミを入れると愉快な音が出るゴミ箱。負担(小)、便益(大)

・男性用小便器の的。負担(小)、便益(小)

「便益」は時間とともに減衰し、「負担」を下回ったとき「飽き」がやってくる

何度も同じ仕掛けを使っていると、その仕掛けから得られる便益が減る。これが「飽き」である。「飽き」を避けるためには、上達が自覚できる、他人から認められる、射幸心(まぐれ当たりによる利益を願う気持ち)が煽られるなどの要素が有効であると言われている。また、「負担」が極端に低い仕掛けも負担が便益を上回ることがないので「飽き」られにくいと言われている。目的に応じて「飽きやすく便益が大きい仕掛け」、「飽きにくく便益が小さい仕掛け」を選択すると良い。

仕掛けは行動中心アプローチである

トイレを清潔に保ちたいという課題がある場合、自動洗浄装置や汚れにくい素材を使うといういうのは装置中心アプローチ。この方法はコストがかかる。対して便器に的をつけるというのは人間の側の行動を変える行動中心アプローチ。「仕掛け」は後者にあたる。

仕掛けもどき

人に並んでもらいたいがために手書きの足跡を地面描いて貼ったが、誰もその上には並ばなかった。手書きのイラストであったがゆえに踏みつけるのを遠慮したものと思われる。こういった仕掛けの失敗も散見される。

仕掛けの原理

以下リンクに分類表をまとめた。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1ouq6esWwuiHuVZC3dHLPfonhdQu-8vE456ktbz47mfg/edit?usp=sharing

【用語】

・物理的トリガ

知覚される物理的な特徴。知識や経験したことを思い出すきっかけとなる。

・フィードバック

人の行動に応じて仕掛けが変化する仕組み。

・フィードフォワード

仕掛けから人に伝わる情報。仕掛けを見たときに何に使うものなのかわかるとそれに導かれるように行動が変わる。

・アナロジー

ものごとの類似性。知識や経験から類推できることがらを利用する。

・アフォーダンス

見ただけで使い方がわかる「物の特徴」

・心理的トリガ

物理的トリガによって人の内面に自然に想起される心理的な動き。

・個人的文脈

自分自身の事情によって個人の内面に生まれる心理的な動き。

トリガの組み合わせ

上記したトリガは単独で用いられるものではなく、組み合わせて利用されている。

「アナロジー×ポジティブな期待」「ポジティブな期待×聴覚」の組み合わせが多く、利用しやすいことがわかる。フィードバックとフィードフォワードは同等の数である。「フィードバック」の中では「視覚」「聴覚」が多い。「ポジティブな期待」「被視感」「社会的証明」なども数が多いので、利用しやすいといえる。

仕掛けの発想法

・子供を観察する

歩道で白い線だけを歩こうとする子供、窓枠の影でケンケンパする子供。子供を観察することで日常の中に隠れる仕掛けを見つけることができる。

・行動観察

よく使われるゴミ箱の特徴。自転車が停められている場所。人通りの多さ、視点、動線、日差し、などその行動が好まれる「仕掛け」がわかってくる。

・行動の痕跡

人がたくさん通った擦れがある床、椅子、行動の痕跡から行動を予測することができる。

・自分自身の行動

なぜこの扉をいつも引いてしまうのか。なぜいつもここで迷ってしまうのか。それには迷わせたり、間違わせたりする原因があるはずである。そこに「仕掛け」が隠されている。

仕掛けの作り方

・仕掛けの事例を転用する

バスケットゴールがついたゴミ箱があれば、バスケットゴールの代わりにサッカーゴールをつけたり、ボーリングのピンをつけたりして既存の仕掛けを転用して新しい仕掛けを作ることができる。

・行動の類異性を利用する

ゴミ箱の「投げる」という行動に着目して。この行動と「類似性」がある「投げる」「しまう」「入れる」「当てる」「落ちる」などを列挙する。次にその行動から連想することを発想していく。「当てる=おみくじ、弓と的、パズル」など。そこから「ゴミを入れるとおみくじができるゴミ箱」などを発想するやり方である。

・仕掛けの原理を利用する

前述した「仕掛けの原理」を利用する。例えばゴミ箱に「フィードバック」の要素を追加して、、「ゴミ箱+フィードバック視覚」=入っているゴミの重さが見えるようにして利用者同士で争えるようにする。などのアイデアが生まれる。

・オズボーンのチェックリスト

1、他の使い道は?

2、他に似たものは?

3、変えてみたら?

4、大きくしてみたら?

5、小さくしてみたら?

6、他のもので代用したら?

7、入れ替えてみたら?

8、逆にしてみたら?

9、組み合わせてみたら?

以上9つのポイントに沿ってアイデアを発想していく。私は「6」の視点でCDの展示ディズプレイにメガネケースを使っている。

おすすめの記事